緊急事態宣言で太ったと感じている人も多いのではないでしょうか?在宅ワークが増えて、外に出ることが減り座ることが多くなったことでカロリー消費が少なくなったり、過食になってしまったりと原因は様々です。
そのひとつとして、生活リズムの乱れに原因があるかもしれません。実は、生活リズムと運動習慣、食習慣は、体をつくることと密接に関わっています。そこで、本記事では、緊急事態宣言下で太ることと生活リズムとそのほか要因について解説した上で、緊急事態宣言を利用して身体を作ることについても解説します。
緊急事態宣言で太る原因は生活リズムの乱れにあり

緊急事態宣言で太ったという人の原因は、生活リズムにあるかもしれません。1回目の緊急事態宣言が2020年4月4日に発令され、2回目の緊急事態宣言が、2021年1月8日に発令され2021年1月16日現在では、全国各地で発令されています。
1回目の緊急事態宣言で調査された研究(注1)では、早稲田大学と株式会社askenが共同でプロジェクトを実施し、外出自粛中の生活リズムの変化について30,000人を対象に調査を実施しました。
この結果、生活リズムが朝型化した人(早寝・早起きになった人)は痩せ、夜型化した人(遅寝・遅起きになった人)が太ったことが明らかにされました。
この原因には、睡眠の質低下、運動量の低下や食習慣の変化などが関係しているのです。
緊急事態宣言で乱れる生活習慣と太るメカニズム

乱れた生活習慣と太ることにはどのような関係があるのでしょうか?
この生活習慣と太ることについてのメカニズムを知れると、逆にこのメカニズムを利用して痩せることにもつながりやすくなります。
そこで下記では睡眠・食事・運動量の観点から解説します。
生活リズムの乱れと太ることのメカニズム①睡眠負債
生活リズムが乱れることで、睡眠負債がたまり太ることが1つ目の原因としてあります。睡
眠負債がたまることで体重の増加につながるポイントは下記3つです(注2)。
- 血糖値のコントロール力低下
- 食欲の増大
- 活動量の低下
健康な成人であれば、朝から夜にかけて、血糖値は高まっていき、深夜には最も低くなります。夜から深夜にかけて血糖値が最も低くなるのは、インスリンの働きが高まるためです。インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンのことで、血糖値を下げる働きがあります。
しかし、睡眠時間が遅く、短くなることによって、血糖値など糖のコントロールがうまくいかず、体脂肪に代わり太ってしまうことが明らかにされています。
生活リズムと太ることのメカニズム②食習慣

また、睡眠負債と食欲にも関係があります。睡眠時間と食欲ホルモン(レプチン・グレリン)は密接にかかわっているからです。レプチンとは、食欲抑制ホルモンのことで、グレリンとは食欲増進ホルモンのことです。
睡眠時間が短くなると、食欲抑制ホルモンのレプチンの分泌が少なくなり、食欲増進ホルモンのグレリンの分泌が増えます。
食欲が増えると、食べる回数や量が増えて、1日の摂取カロリーが多くなります。1日の消費カロリーを上回った余剰カロリーは体脂肪に変わってしまってしまうため、睡眠時間が短くなると結果的に太ってしまうのです。
生活リズムと太ることのメカニズム③運動量の低下

夜寝るのが遅くなると、日中の身体活動量(AEE:Activity-related Energy Expenditure)が低下します。日中の身体活動量は、運動することよりも、座る・立つ・歩くなどが一日の大半を占めています。
寝ている状態(安静時)を1とすると、座っている状態だと1.5倍~1.8倍もの活動量があります。また通勤などでは、寝ている状態の4倍もの身体活動量にあたります(注3)。
しかし、睡眠負債がたまってくると、日中の身体活動量が減り、食欲が増えることに伴って、摂取カロリーが増えるので、太りやすい生活リズムになってしまいます。
このように、睡眠不足や睡眠リズムが狂い生活リズムが乱れてしまうことで、日常生活に影響を及ぼしてしまうというリスクがあります。
増えた体重を減らして理想の体を手に入れるためには

増えた体重を減らして理想の体を手に入れるためには、どのようにすればよいのでしょうか?
メカニズムについて分かったものの、具体的にどうすれば良いか分からないという人も多いでしょう。そこでここでは、睡眠・運動・食事・心の4つのポイントから解説します。
睡眠時間を早める

睡眠時間を早めることは、先にも解説したとおり、ホルモンの分泌を調整してくれるので、とても大切です。
しかし、睡眠時間を早めることは簡単ではありません。睡眠時間は、遅くすることは簡単ですが早くすることはとても難しいのです。
早い睡眠時間(早い就寝時間)は、睡眠の質を決める一つの要因でもあります。睡眠の質を高めるためには、さまざまなことが必要です。
睡眠時間や睡眠の質を高めるためには、下記の記事で詳しく解説しているので、チェックしてみてください。
リモートワークで睡眠サイクルが狂ってしまった!急増している健康被害とは?
下記では、コロナで太って悩んでいる人に向けて、日中のトレーニング、食事方法、メンタルマネジメントといった観点から解説します。
太った身体を鍛えるためのトレーニング

太った身体を鍛えるためのトレーニングは、睡眠時間を早めるという意味でも、ダイエットをするという意味でも効果的です。
日中のトレーニングは睡眠時間を早めるのに効果的
日中のトレーニングは睡眠時間を早める上ではとても効果的です。なぜならば、トレーニングそのものに、不安の軽減や抑うつ気分の低下といった効果が明らかにされているためです(注4)。
また、トレーニングは、体温の変化とも関係しています。そもそも、体温が下がってくると、人は眠くなります。夜に体温が下がることで、眠気をさそいやすくなり、早い時間に就寝しやすくなります。
特に、夕方に30分~60分程度の有酸素運動を実施することで、体温の調整機能に効果的に働きかけて質の高い睡眠につながります(注5)。
筋トレはダイエットに効果的
筋トレはダイエットする上ではとても効果的です。一般的に体脂肪を燃焼するのは有酸素運動と思われがちですが、筋肉量を増やして基礎代謝を増やしたほうが、1日のトータル消費カロリーが上がるので、有酸素運動をするよりも体重を減らす上では効果的と言えます。
特に、胸・背中・脚といった体積・面積の大きな筋肉を鍛えるトレーニングは、BIG3とも呼ばれ、筋力トレーニングでもっともメジャーなトレーニングでもあります。
BIG3の代表的なトレーニング | |
胸 | 自重トレーニング:プッシュアップマシン:チェストプレスダンベル:ダンベルプレスバーベル:ベンチプレス |
背中 | 自重トレーニング:懸垂マシン:ラットプルダウンダンベル:ワンハンドローイングバーベル:デッドリフト |
脚 | 自重トレーニング:ランジマシン:レッグカールダンベル:ダンベルスクワットバーベル:バーベルスクワット |
これらの胸・背中・脚といった筋肉は、とても大きな筋肉です。大きな筋肉を鍛えることで、筋肉量が増えて、除脂肪体重(体脂肪を除いた体重)が増えます。
除脂肪体重を増やすことで、一日の消費カロリー(基礎代謝)が増えるので、同じ食事をしていても、太りにくい体をつくれます。
太った身体を絞る食事方法

太った身体を絞るためには、食事方法はとても大切です。なぜならば、体重を減らすことの大原則として、一日の消費カロリーよりも摂取カロリー(食事や間食)を減らすことがあるためです。
たとえば、1日1800kcalの人が、2000キロカロリーの食事を摂取した場合、単純に計算すると、200kcal分のエネルギーは体脂肪になります。
200kcalは、脂肪の重さに換算すると、およそ2g程度に相当します。1日2gですら、1か月続けば60g、1年続けてしまえば、720gもの体脂肪を体につけてしまうことになります。
大切なのは、1日に必要なカロリーよりも、下回ったカロリーを摂取することなのです。
※基礎代謝については下記サイトなどで計算してみてください。
トレーニングや食事制限を持続するためのメンタルマネジメント

トレーニングや食事制限は、習慣化されるまでがとても大変です。そこで、大切になってくるのがメンタル面の要素です。特に、自分の目標体重や理想とする身体・スタイルを数値化してみるのはとても効果的です。
たとえば、体重60kgの人が体重50kgにしようと思った場合は、最低でも3か月程度の期間は必要になります。
なぜならば、1か月あたり3kg以上のダイエットは、過度なダイエットになってしまい、急激なリバウンドを招きやすいためです。
1か月3kgを上限とした場合、3kgの体脂肪を燃焼しようと思ったら、27000キロカロリー/月ものエネルギーを消費しなければなりません。27000キロカロリーを1か月で消費するために必要な1日のエネルギー消費は、900キロカロリーです。
900キロカロリーものエネルギーを運動だけで消費するのはかなり難しいので、400キロカロリーは有酸素運動で消費し、残りの500キロカロリーは食事で制限するといったような目標設定ができるとよいでしょう。
太った身体は理想の体を手に入れる絶好のチャンス
太った身体でショックを受けてしまう人も多いでしょう。一方で、理想の体を手に入れる絶好のチャンスでもあります。理想の身体を手に入れるためには、生活リズムを整えることが欠かせません。
生活リズムを整えるためには、トレーニングをすることはとても効果的で、食事制限や目標設定などを同時に行うことで、理想の身体も手に入り、生活リズムの乱れも解消されやすくなります。
本記事を参考にして、緊急事態宣言を理想の生活習慣を手に入れるチャンスにしてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 田原優(2020)コロナ禍の外出自粛により生活リズムが変化 ~3万人規模の調査成果~ 早稲田大学公式サイト (最終閲覧日:2021年1月12日)
- Kristen L. Knutson, Karine Spiegel, Plamen Penev and Eve Van Cauter(2007). The Metabolic Consequences of Sleep Deprivation Sleep Med Rev,11(3): 163-178.
- 国立健康・栄養研究所(2012).改訂版 身体活動のメッツ(METs)表
- Zubia Veqar, M EjazHussain(2012). Sleep Quality Improvement and Exercise: A Review International Journal of Scientific and Research Publications, 2(8): 1-8.
- Driver, S. and Taylor, S. R.(1996). Sleep disturbances and exercise Sports Med,21(1): 1-6.