リモートワークで睡眠サイクルが狂ってしまった!急増している健康被害とは?

コロナの影響で広がるリモートワーク。大きく働き方が変わっていく裏側では、数多くの健康被害の報告がされています。今回は、リモートワークにおける健康被害の1つである睡眠サイクルの乱れについて詳しく解説します。

リモートワークによる健康被害、3つの原因

リモートワークは、外での仕事に比べて健康被害が起こりやすいです。コロナ影響下のリモートワークに関する調査※1 では、41%の「収入面に懸念を示していること」に次いで、17%もの方が「健康について懸念を示していること」が明らかにされています。

実際どんな健康被害があるのでしょうか。
ここからは、リモートワークにおける健康被害を原因ごとにご紹介していきます。

リモートワークの健康被害の原因①活動量の低下

リモートワークの健康被害に、大きな影響を及ぼしている原因の1つとして、活動量の低下があります。人は出勤したり、電車に乗ったり歩いたりするだけで、座っているよりも大きなエネルギーの消費をしています。

このエネルギー消費のなかで、人間は脚の筋肉である腓腹筋の働きによって、全身の血液循環を促しています。この働きをミルキーポンプ作用といい、第2の心臓と言われるほど全身の血液循環に大きな影響を及ぼしています。

リモートワークで活動量が低下してしまい、全身の血液循環が悪くなると肩こりや腰痛・関節痛といった健康被害や、眼精疲労、冷え性などが引き起こされるリスクが高まります。

リモートワークの健康被害の原因②メンタルヘルスの悪化

リモートワークの健康被害として、多いのがメンタルヘルスの悪化です。

メンタルヘルスで最も注目されている指標は、不安と抑うつ感情です。コロナ状況下におけるリモートワークと不安に関連する研究データ等は、あまり発表されていないものの、身体活動量と不安・抑うつ感情の研究は、健康心理学領域で数多くなされています。

Brown, J D.の研究では、運動頻度と抑うつ感情には関係性があったことが報告されていて、運動頻度が高いほど抑うつ感情が低かったことが明らかにされています※2。つまり、在宅ワークで身体活動量が減ると、抑うつ感情が高まってメンタルヘルス悪化のリスクが高くなるということです。

リモートワークの健康被害の原因③睡眠の質の低下

睡眠の質は、下記の7つの要因から構成されています。

  1. 主観的な睡眠の質の評価
  2. 入眠時間
  3. 睡眠時間
  4. 睡眠効率
  5. 睡眠困難
  6. 眠剤の仕様
  7. 日中覚醒困難

これらの睡眠の質は、身体活動や不安・抑うつとの関係について調査が行われています。特に、大学1年生186名を対象にした調査※3では、身体活動量と主観的な睡眠の質の評価は関係していることが明らかにされました。

つまり、リモートワークにより、日中の身体活動量(歩いたり立ったりする活動)が少なくなるほど、睡眠の質が低くなってしまうということです。では、質の高い睡眠をとるためにはどのようにすればよいのでしょうか?

リモートワークで質の高い睡眠を取るための秘訣は習慣

ここまで、リモートワークが増えることで、身体活動量が減って睡眠の質が低くなってしまうことについてお話しました。どのようにすれば質の高い睡眠がとれるようになるのでしょうか。ここでは、質の高い睡眠を取るための秘訣についてご紹介します。

運動習慣(軽度な有酸素運動)は質の高い睡眠へ誘う

午前中の運動習慣は質の高い睡眠に影響します。特に、きつい運動ではなく、ウォーキングや軽いジョギングといった軽度の有酸素運動を実施すると睡眠の質が高くなることが科学的にも明らかにされています。

運動の種類によって、睡眠パターンへ影響することが明らかにされていて、筋トレなどのハードなトレーニングは、睡眠への影響がなかったことも報告されています。

一方で、長距離走るような持久力系のトレーニングは、睡眠時間を増やして、入眠時間を早めることも報告されているので、質の高い睡眠を取る上では、軽いウォーキングやランニングはとても効果的といえるでしょう。

軽度な有酸素運動のやり方

質の高い睡眠を取るための軽度な有酸素運動のやり方として、大切なのは呼吸です。

呼吸が、運動強度の目安になることは、ボルグスケール(主観的運動強度)の研究で明らかになっています。目安とするべき運動強度は、60%~70%程度で、呼吸は「楽である」か「ややきつい」程度の運動が適しています。

呼吸が苦しくて喋ることができなくなったり、喉に血がたまったような感覚になってしまう場合は、運動強度が少し高いです。ウォーキングやランニングでは、スピードを落としたり、ピッチ(脚の動き)を遅くしたりして、楽な運動ができるように心がけると良いでしょう。

良い睡眠サイクルは体内時計のリズムを作り出し習慣へ

良い睡眠サイクルは、体内時計のリズムを作り出し、そして習慣化されます。

この体内時計は、概日リズムといい、24時間の周期における脳波やホルモン分泌、細胞の再生などの様々なことに関係しています。

特に、概日リズムとメラトニンの分泌(入眠に必要なホルモンの分泌)は、深く関係していてます。メラトニンは夜間にたくさん分泌され、昼間はあまり分泌されないホルモンですが、概日リズムがくるってしまうことで、規則正しい睡眠・覚醒リズムが損なわれてしまう可能性があります。

良い睡眠サイクルをつくることで、健康被害を及ぼす負の連鎖を断ち切ることが重要です。

質の高い睡眠がもたらす3つの影響

質の高い睡眠は、健康や人間関係、仕事へのパフォーマンスなどへ影響します。

最後に、質の高い睡眠がもたらす影響を3つ解説します。

質の高い睡眠がもたらす影響①健康

質の高い睡眠は、肥満や病気などのリスクを減らします。

アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Desease Control and Prevention)では、最低でも7時間以上の睡眠を推奨しています。6時間以上の短い睡眠は、循環器疾患や、肥満、精神疾患やうつ病、自傷行為や自殺願望といったことに影響することが明らかにされています※6。

つまり、睡眠は、身体機能や各種疾患とも関係していて、質の高い睡眠を摂るほど、健康でいられるということです。

質の高い睡眠がもたらす影響②人間関係

睡眠の質は職場の人間関係とも関係しています。特にリーダーシップを取る人が質の低い睡眠しかとれていないと、十分なリーダーシップを発揮するコミュニケーションがとれず、組織の力も低くなってしまうことが明らかにされています※6。

特に、リーダーシップを取る立場にある人は、質の高い睡眠をとったほうが組織の中の人間関係が良くなり、結果的に組織としての力も大きくなるのです。

質の高い睡眠がもたらす影響③仕事へのパフォーマンス

睡眠は仕事におけるパフォーマンスとも密接に関係しています。特に、仕事への満足度や顧客へのサービス、決断ミスやクリエイティビティ、エンゲージメントといったことと睡眠が関係していることが明らかになっています※6。

質の低い睡眠は、ネガティブな気分や感情になりやすく、仕事への満足度も低くなります。また、質の低い睡眠は日中の注意散漫な状態をつくりだしてしまうことで、決断ミスなどの原因もなりかねません。

生活リズムを整え、ウェルビーイングを手に入れる

リモートワークで、身体活動のレベルを下げてしまうと、様々な弊害がもたらされます。そして、睡眠の質も低くなってしまうことにより、仕事のパフォーマンスも低くなってしまいます。

睡眠の質を高めるためには、軽度の有酸素運動(ウォーキングやランニング)をすることが効果的です。軽度の有酸素運動は、入眠時間を早め、睡眠時間を多くとれるので睡眠の質が高くなるのです。

生活リズム(概日リズム)を整えることで、健康を維持し、長期的な幸せ(ウェルビーイング:Well-being)を意識してみませんか。

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上記に当てはまらずとも、RASHISAに関心がある方はご連絡いただけると嬉しいです。

参考文献

  1.  Brown, J D.(1991). Staying fit and staying well: Physical fitness as a moderator of life stress Journal of Personality and Social Psychology, 60(4): 555-561.
  2. 荒井弘和,中村友浩,木内敦詞,浦井良太郎(2006).主観的な睡眠の質と身体活動および心理的適応との関連 心身医,64(7):667-676.
  3. Helen S. Driver and Shelia R. Taylor(2000). Exercise and sleep Sleep Medicine Review, 4(4): 387-402. 
  4. 公益財団法人長寿科学振興財団(2019).心拍数と運動強度 健康長寿ネット(最終閲覧日:2020年11月24日
  5. Christopher M. Barnes and Nathaniel F. Watson(2019). Why healthy sleep is good for business Sleep Medicine Reviews, 47: 112-118.

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この記事を書いた人

後藤晃一

◉名前
後藤晃一

◉所属
CoGno 代表
株式会社RASHISA
NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ
NPO法人Compassion

◉出身
岐阜県

◉経歴
東海大学体育学部競技スポーツ学科
東海大学体育学研究科体育学専攻
大学生弓道部メンタルトレーニングコーチ
中学生野球チームメンタルトレーニングコーチ
Association for Applied Sport Psychology
日本スポーツ心理学会

◉趣味・特技
ボディメイキング(フィジーク)
スポーツ全般(サッカー・テニスetc...)
アウトドアスポーツ(スキー・ラフティングetc...)

◉自己紹介文
「人の可能性が高まる社会へ」という想いで「競争を競創へ」というコンセプトのもと、スポーツ&パフォーマンス心理学の知見を活かした活動をしています。
研究テーマとしては「マインドセット」で人が可能性を高められる考え方をいかに育むのかを科学的な方法で開発中。